御同朋の社会をめざす運動(実践運動)

  重点プロジェクト基本計画〈2012(平成24)年度〜2014(平成26)年度〉

「御同朋の社会をめざす運動」(実践運動)
 お釈迦さまは、生老病死という人間のかかえる究極的な苦悩への問いかけを契機として、出家され、仏教を説かれました。また、親鸞聖人は、災害と戦乱の中世にあって、苦悩の 中にある人びとを救う真実の教えをお示しくださいました。人びとの苦悩とともに生き抜 くということが、わたしたちの大切にしているみ教えの根本にあるのです。
 親鸞聖人は、「小慈小悲もなき身」と自身の無力さを嘆かれました。しかし、聖人は、 世を捨て家を捨てた隠棲の出家者となられたのではなく、自ら家庭を持ち、市井に生きる 人びとと苦悩をともにし、お念仏の道を歩まれました。聖人を慕うわたしたちは、いかに 無力の身であっても、常に聖人の生き方を鏡として、わが身を振り返りつつ、人びとの苦 悩に寄り添っていかなければなりません。その思いが、わたしたち宗門の活動を表わす 「御同朋の社会をめざす」という言葉にこめられています。

 宗門を構成する門信徒、僧侶、寺族、そして寺院やさまざまな団体は、それぞれの地域 にあって、各地の特性を活かしながら、人びとに寄り添う、貴重な活動を熱心に実践して こられました。その活動の成果によって、み教えが人びとの生活の依りどころになり、町 や村の人びとをつなぎ、伝統的な日本社会の礎となってまいりました。
 「実践運動」とは、こうした伝統を継承し、お念仏の教えを基本として、宗門全体で未 来を創造していく活動です。「実践運動」には、全員が参画する運動として目標を広く共 有するため、「総合テーマ」を掲げます。宗門は、この「総合テーマ」のもと、宗門内外 の人びととつながりながら、具体的な社会活動を実践してまいります。また、各地で実践 されている活動の情報を集め、その知恵や経験を宗門の大切な財産として集約し、宗門全 体にお伝えしていきたいと考えています。
 「実践運動」では、寺院を核とする「自他共に心豊かに生きることのできる社会」を実 現するために、「総合テーマ」を掲げ、ネットワークを築き、具体的な社会貢献をめざし て、活動を推進していきます。



1.総合テーマ
そっとつながる ホッがつたわる〜結ぶ絆から、広がるご縁へ〜
 東日本大震災以後、「絆」が時代を象徴する言葉になりました。絆とは、離れがたくつ ながりあっている関係を意味しています。悲痛な経験を通して、人と人との「つながり」 の尊さへの気づきが始まっています。
 さらに一歩踏み込んで、「つながり」のより深く広い意味を、仏教の立場から発信して いくのが「ご縁」という言葉です。
 「そっと」とは、やさしく包みこむようにつながることを意味しています。「ホッ」とは、 そうしたつながりの中で与えられる安心感のことです。こうした活動を通して、つながり の大切さが実感され、安心と温もりのある社会に寄与していきたいと考えています。わた したちは、大悲のはたらきに包まれている身として、「ご縁」の尊さ、大切さを、社会の 中に広く浸透させていく活動を進めてまいります。
 「ごえん」人と人を結びつける不思議なめぐりあわせです。
 「ごえん」わたしたちが自覚する以前から、つながっています。
 「ごえん」わたしたちが認識している以上に、遠くまで広がっています。
 「ごえん」過去から現在、現在から未来へとつながっていきます。
 「ごえん」誰もがつながっていけることです。
 「ごえん」わたしとあなたのことです。
 「ごえん」わたしと仏さまのことです。
 「ごえん」わたしのいのちを支えているものです。
 「ごえん」わたしがここに存在していることそのものです。
 「ごえん」わたしはあらゆるものにつながっています。
 親鸞聖人の言葉を伝える『歎異抄』には、「一切の有情はみなもつて世々生々の父母・ 兄弟なり」とあり、すべてのものがつながり合っていることが示されています。また、 『教行信証』には「遠く宿縁を慶べ」と、仏の救いに出遇えたよろこびが「縁」という言 葉で表現されています。阿弥陀如来の救いが、はるか遠い昔から、わたしたちを包んでく ださっていることが、仏の縁と示されているのです。
 また、「縁」とは、わたしが関係の中にあることを知らせ、自己中心的な考え方を省み させる言葉であり、生死の中でめぐまれたつながりの尊さを教えてくれる言葉でもありま す。
 「無縁社会」といわれる中、「ご縁」という普遍的な言葉を通して、宗門内外の人びととつながり、ネットワークを創り、広がっていく活動を進めていきたいと考えています。



2.重点プロジェクトの「実践目標」設定
 「重点プロジェクト」は、「総合テーマ」をもとに、活動主体がそれぞれ「実践目標」や 具体的な「達成目標」などを設定して、成果を検証しながら、推進していくプロジェクト です。
 「実践目標」は、期間(期限)を共通に3年間として総局が決定し、それが伝道本部 (宗務所)の「実践目標」となります。しかし、地域のそれぞれの活動主体が、〔宗門の課 題リスト〕を参考に、それぞれの特性に応じて、独自に「実践目標」を定め、活動を推進 することもできます。
 例えば、伝道本部(宗務所)では、〔宗門の課題リスト〕から「災害支援」を選択し、 「実践目標」は「東日本大震災をはじめとする被災者への支援」としましたが、活動主体 によっては、「子育て支援」、「葬送儀礼」などを選択し、活動を進めることもできます。 重点プロジェクト推進室では、こうした活動に対して、情報提供などの支援を行ってい きます。また、各活動主体のさまざまな取り組み、各地の実践事例を提供いただき、それ を集約、発信いたします。このように「重点プロジェクト」では、実践事例を有機的に結 びつけ、課題を共有しつつ、宗門全体の社会活動がより充実したものとなるよう、計画的 に推進されます。
〔宗門の課題リスト〕
 第9回宗勢基本調査では、宗門に期待することとして、「人びとの苦悩に応える教団で あって欲しい」という項目が、全対象者において最も多く選択されました。(住職56.4%、 坊守56.4%、門徒41.1%)
 この〔宗門の課題リスト〕は、社会情勢や宗勢基本調査などから浮かび上がってきた課 題をもとに、伝道本部(宗務所)において検討しリストにしたもので、まさに人びとの苦 悩に応える教団として取り組むべき課題でもあります。
 これは、あくまでも一例ですが、それぞれの活動主体が「実践目標」を定める上での資 料として準備しましたので、ご参考ください。

リスト 「実践目標」例 活動内容例
災害支援 東日本大震災をはじめとする被災者への支援 多様な技術や経験を持つ僧侶や門信徒などによるボランティアチームを結成し、被災地でその特性を活かした活動を行うことにより、被災者とこころがつながる支援をする
傾聴ボランティアを育成し、被災者の声を聴いて、少しでも安心につながる支援をする
被災地の物産展やチャリティーバザーの実施により、義援金や支援金を集めるなど、復興を願う人びとがつながりながら被災者を支援する
手芸などの手作り品やメッセージなどを贈り、被災者とこころがつながる支援をする
被災者、支援者の体験報告を行う。また、行政・宗門の被災・支援情報を提供することにより、被災者と支援者のこころがつながる支援をする
環境問題 エネルギーやものを大切にするこころを学ぶ お寺で電灯を使わず過ごす経験などを通して、エネルギーの大切さを学ぶとともに、不便さの中で、ものの大切さや人と人とが助け合いつながりあうご縁の温かさを学ぶ
お寺に小規模の太陽光発電システムを設置し、電力を作る仕組みを子どもたちが学ぶ機会を提供する。また、ものの循環するシステムを学び、ものを大切にするこころを養うことで、生活の中にあるさまざまなつながりを学ぶ
お寺や地域の門信徒が生産する食材を用いた食事会を開き、生産者から米や野菜などが育つ過程を学び、食物を無駄なく使うことの大切さを体験することで、いのちのつながりを学ぶ
将来に豊かな大地を遺すために、植樹を行い、自然や環境を守る温かいこころを後世につなげる。「本願寺の森」に登録し、全国に広がっていく活動へと展開する
高齢社会 月忌参りによるこころの支援 月忌参りを行い、お年寄りや介護にかかわる家族とふれあい、そのつながりの中で、老病死に寄り添う
お年寄りを中心としたご縁づくり お寺で、お年寄りが昔話や体験談を語るなど、子どもたちと交流し、お年寄りがいきいきと活躍でき、子どもたちも人生体験を学べる場を提供することによって、こころ温まるご縁づくりを行う
高齢者施設におけるこころの支援 ビハーラでの学びを活かして、高齢者施設を訪問し、施設利用者や家族、施設職員とのつながりの中で、苦悩に寄り添う
ターミナル
ケア
患者や家族へのこころの支援 病院や患者宅を訪問し、『こころのお見舞い(響・光)』を贈るなど、患者やその家族とのつながりの中で、老病死や愛別離苦に寄り添う
病院で募集するボランティア(「病院ボランティア」)に参加することにより、患者やその家族とそっとつながる
子育て支援 キッズサンガによる子どもたちへの支援 キッズサンガ(お寺を子どものこころ安らぐ居場所にしていこうとするもの)に取り組むことにより、子どもから大人まで、地域とお寺がつながっていく環境をつくる
子育てしやすい地域、環境をつくる お寺で、門信徒や僧侶のさまざまな資格や趣味を活かし、親子が一緒に参加、参拝できる場づくりをし、地域の親子とお寺をつなげる
地域で子育て中の世代がつどい、相互交流や悩みを相談できる場としてお寺を提供することにより、地域の親子とお寺をつなげる
児童虐待や犯罪被害などから子どもを守る駆け込み寺や関係機関につなぐ機能を果たすことで、地域とお寺のご縁をつくる
自死自殺 苦悩を抱える人の居場所づくり 掲示板を用いるなどして、お寺が苦悩に寄り添う場であることを伝え、ほっとできる居場所を提供する
話を聴くための研修会に参加するなど、傾聴のできる相談員を養成して相談窓口を開設し、苦悩などを抱えた方とつながり、安心できる居場所を提供する
月忌参りによる取り組み 月忌参りを行い、孤独を抱えている様子が窺える場合、時間を充分にとり、そっと寄り添い丁寧に話を聴く活動(かかりつけのお坊さんとしての活動)を進める
死にたいほどの気持ちに寄り添うための取り組み 仏教における自死の見方を学ぶ学習会を開き、自死に対する無理解と偏見を減らし、苦悩を抱えた方にとって居心地の良い社会づくりをする
自死遺族へのこころのサポート 追悼法要や遺族会を開き、自死遺族のこころのサポートを行い、温もりのある社会の実現をめざす
葬送儀礼 葬儀を行う意味を伝えていく 大切な人の死を通して、生きることの意味や如来の救いの尊さを知らされていく、という葬送の本来の意味を、葬儀や僧侶のあり方を研鑽することによって、再生させていく。その活動を通して、死別の悲嘆に寄り添い、受けとめることのできる社会づくりに寄与していく
遺族へのこころの支援
(グリーフケア)
臨終、通夜、中陰などで積極的に遺族と会話し、つながりをつくり、グリーフケアを行うことで、苦悩に寄り添う
日常の
寺院活動
地域と寺院とのつながりを大切にする 門信徒や僧侶が、周辺地域を含めたお寺の清掃活動を行うなどして、お寺の「外」にかかわる活動を進め、地域とつながるお寺づくりをすすめる
地域につながる人と人のつながりの育成 壮年会や婦人会のメンバーが、子どもたちの安全を守るなど、地域社会に貢献する活動を行い、地域社会における人と人とのつながりを、お寺を拠点として作り出していく

これらの〔宗門の課題リスト〕に挙げられていない課題を選択することも可能です。そ の際は、総合テーマに沿った課題となるよう、ご留意ください。
なお、この〔宗門の課題リスト〕を作成するにあたっては、以下の資料などを参考に抽 出しました。
 ・宗派関係資料
  第9回宗勢基本調査、ビハーラ、自死自殺などの関係資料ほか
 ・行政機関ホームページ
  環境省、内閣府(政策統括官『平成24年版高齢社会白書』、
  『平成24年版子ども・子育て白書』)、
  厚生労働省児童虐待防止対策ほか
 ・教育機関ホームページ
  東北大学、龍谷大学ほか
 ・社会福祉法人全国社会福祉協議会、
  全国民生委員児童委員連合会ホームページほか